あんしんライフよこすか

認知症になったら「任意後見制度」と「家族信託」どちらを使う?

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「もし将来、父や母が認知症になったら…」
何度か書きましたので、お読みいただいている方は分かっていると思いますが、認知症は決して対岸の火事ではなく、身近な問題ですね。

ただ、きっかけがなければ「何か手を打とう」とは考えにくいものです。
そんな、認知症の備えとして「任意後見制度」と「家族信託」の2つが代表選手です。

どちらも有効な手段ですが、どっちが良いのか・・・?
以前ご相談にいらしたお客様のケースで、簡単に違いについてを書いてみます。

先日お父様を亡くされたという女性の方からのご相談です。

相続人はご相談者様とお母様のお2人。
生前お父様は「全財産をお母様に相続させる」という内容の話をしていたそうです。
当然、このことはご相談者様もお母様も知っており、その通りに相続する予定でした。(遺言書はなし)

ところが・・・
最近のお母様の様子が少しおかしい。
一言でいうなら認知症かも・・・という状況だそうです。

「このまま母に実家を継がせていいのだろうか?」

というのも、以前より家族2人なので施設入所になったら実家を売って入所代にしようと、お母様とは話をしていたそうです。

当然ですが、 お母様名義の不動産を売る場合、お母様の同意が必要です。
以前にも書きましたが、認知症が発症した場合、自宅売却は不可能です。
遺言書もない事から、ご相談者が実家を相続することも視野に入れ考えましたが、お父様の遺志を無駄にしたくないとの事。

さてどうするか・・・

我々がご提案したのが「任意後見制度」と「家族信託」です。

諸々の条件はありますが、「任意後見制度」や「家族信託」を使えば、母が認知症になっても家を売却できます。

ここで、少しおさらい・・・
・任意後見制度とは、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ代理人(任意後見人)に、自分の療養看護や財産管理を託すことができる制度ですね。
詳しくはこちら

・家族信託とは「本人が十分な判断能力があるうちに」財産を信頼できる「誰か」に託す(=信じて託すから、「信託」)ことで、本人に将来何かあっでも希望をかなえる手段です。
詳しくはこちら
覚えてますか?

両方に共通する特徴としては、「託す」相手をお母様が選ぶことができ、その人が財産の管理や処分ができる点にあります。
つまり、お母様がどちらの制度を利用しても、「託す相手」を相談者にしておけば、将来認知症が発症・進行した場合でも、ご相談者はご自宅を売却して、
その代金を施設の入居費や介護費用に充てることが出来ますよね。

それぞれに良さそうですが、違いがあります。

ちなみに・・・任意後見人制度も家族信託も、「託す」相手の権限で財産の管理や処分ができるので、
「もし、託した相手が悪意で財産を処分したり、だまされてしまったら?」
という素朴な疑問が出ます。
「託す」相手は信用できる人なので心配ないという声が聞こえてきそうですが、ここに制度上の違いがあります。

任意後見制度では、託した相手(=任意後見人)を監督する人(任意後見監督人)の設置を義務付けています。
監督人には、通常弁護士などの専門家を家庭裁判所が任命します。

一方、家族信託では、任意後見制度のような監督の仕組みはありません。
(ただし、任意で指定することは可能です。)

家族信託の大きな特徴として「任意後見制度にはない自由な設計」があります。
例えば本人が元気なうちに託した相手が託された財産を積極的に運用するようなことも可能となります。

また、費用の面でも違いがあります。
任意後見制度では、「初期費用は安いが、その後毎月の費用は当事者が亡くなるまで続く」のに対し、
家族信託は「初期費用(公正証書契約)は高いが、その後継続的に発生する費用が(原則)ない」のが特徴です。

つまり・・・
「任意後見制度」ではできない自由な設計が「家族信託」では可能。
ただ、初期費用は家族信託は高いという事です。

すごく簡単ですが、こういった違いがあります。

比較検討した結果、今回は任意後見制度を利用することになりました。
理由としては、
・比較的お母様の認知症は進行していなかったこと
・資金的にお母が施設入所の際には自宅を売却する以外の方法がないこと
・初期費用が安いこと
の3つです。

比較的新しい「家族信託」の手法は、これまでできなかった当事者の想いをかなえる可能性を秘めています。
一方で、今回のように任意後見制度で十分な場合もあります。

どちらを選ぶかのポイントは、「本人がかなえたい希望は何か?」です。

今回は、お父様が亡くなった直後という状況にもかかわらず、お母様の状態の変化に気が付いた相談者と
次の手を打つ事に、協力的だったお母様のファインプレーだったかと思います。



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